1枚の樹脂シートを、丁寧に折りあげることで完成するサイナスライン。1971年にデザインされた当時としても非常に画期的なデザインでした。レ・クリントの伝統的で真っすぐなシェードとは全く異なることから、新たな顧客層から注目され、瞬く間に広がっていきました。今でもモダンな雰囲気をまとい、50年前にデザインされたとは思えない新鮮さが残っています。
デザイナーのポール・クリスチャンセンは、カーブ(数学的な正弦曲線)を多用したことにより、独創的で新しい表情を、レ・クリントの照明に吹き込みました。樹脂素材のシェードから透過する光はとても柔らかく、シェードに浮かび上がる大きな陰影が、どこか懐かしく、空間に温かみと落ち着きをもたらしてくれます。やさしいデザインは、点灯していない時も目を楽しませてくれます。
家庭ではダイニング照明として、多灯吊りやサイズ違いで合わせても。吹き抜けや施設の上部空間の広い場所では、動きのあるデザインの照明を吊ることで、物足りなさを払拭し、空間全体をデザインしてくれます。
照明界の革命児…?
ポール・クリスチャンセンはデンマーク王立芸術アカデミー建築科で学ぶ学生でした。卵をのせるトレーを制作する課題がヒントとなり、これまでにない照明が誕生します。コペンハーゲンに住むポールは、レ・クリント旗艦店の前をよく通っていて、ある日新たなデザイン照明を提案するために、お店を訪ねます。試行錯誤の末に、紙でカーブを折る方法を見つけ、最初に生まれたのがモデル167でした。この美しいカーブの照明が次々と生み出され、ステルトンの不朽の名作であるシリンダラインのような存在になりたいとの思いから、「サイナスライン」と命名しました。
最初に生まれたモデル167。曲線のデザインは当時としては珍しかったといいます。
自身の展示会に向けて数々の照明をデザインしたポール。その中でもひと際目立ち、好評を得たのがモデル172でした。すぐにデンマーク、オーデンセの工房で生産することが決まり、これまでにないカーブの折り方を職人に指導するために、ポール自らが数ヶ月にわたって工房に通ったといいます。現在、生産終了しているアイテムも一部ありますが、50周年を機にポール・クリスチャンセンの独自のデザインと世界観をお楽しみください。
デザイナーのポール・クリスチャンセンが2007年に来日した際の一枚。